ビールとスパイスについて ―ビールに スパイス を加える―
―ハーブとスパイスー
前回のブログにてお話ししたように、ハーブとスパイスは古くからビールに含まれています。そして、それらの多くは好まれ、幅広く使用されています。
下記の表では最も一般的なスパイスをまとめています。 この表は、ビールの大会に出品されたビールに使用されているハーブとスパイスのリストです。
コメントには、ビールの評価が記載されており、JacquesBertensによって作成されており、Hobbybrouwen.nlにも掲載されています。
ONKにおいてスパイスやハーブを使用したビール
(Jacques Bertens)
スパイス | コメント |
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コリアンダーシード | 言わずと知れた最も人気のスパイス ホワイトビールはもちろんのこと、ブラウンビールに使用しているものは特に評価が高い。 |
オレンジピール | こちらもとてもメジャーなスパイス。平均してあまり高いスコアーは取れていない。 特に濃いビールに使用することはお勧めしません。 |
リコリス(甘草) | ダークやブラウンビールに使用するととても高いスコアーを取っている。 明るい色のビールとの組み合わせはあまりよくない。 |
ジュニパーベリー | 全体的にこのスパイスを使用したビールは評価されていません。 もしかすると若いジュネーバ(ジンの原型とされているお酒)の香りが好まれていないのかもしれない。 |
ジンジャー | こちらも使用しているビールは平均して低いスコアーつけられている。 |
クミン | 最大100L当たり40gの使用量がこのスパイスの使用したビールが最も評価される。 |
クローブ(丁子) | 少量の使用(100Lあたり3gから10ℊ)がダークビールにとってとても良い。 うすめのダークエールに関する情報はありませんが明るい色のビールにはあまりお勧めしません。 |
アニス(八角) | 濃い色のビールには特にいい評価がされている。 |
レモングラス | 重いビールにはおすすめできない。 |
ダイダイピール(Curaçaoschil) | 平均よりわずかに低い評価。 |
カルダモン | これらのスパイスが使われていたビールは評価できるほど出品されていませんでした。 ただ、青いハーブ系はあまり良い評価をされていません。 |
マンダリンピール | |
シナモン | |
ディル | |
タラゴン | |
ローリエ | |
ギニアショウガ | |
セージ | |
エルダーフラワー |
この表に記載されている内容はあくまで一つの大会における評価であり、決して評価の低いスパイスがビールに向いていないというわけではありません。
スパイスは組み合わせや合わせるビールにより無限に可能性があります。この表を一つの参考としていろいろチャレンジをしてみてください。
クリスマスビール用のスパイスの粉砕
(Kakegawa Farm Brewing)
スパイスを使用しドライフルーツのような
風味のあるクリスマスビール
(Kakegawa Farm Brewing)
さて、さまざまなハーブやスパイスを混ぜたい場合は、料理にどのようなスパイスが使われえているか、というところから見ることができます。
料理でのスパイス同士の良い組み合わせは、ビールにおいても良い組み合わせになることがよくあります。
しかし、それは試してみないことには分かりません。スパイスを試す場合は、小ロットでのテストバッチとしてビールを作るか、スパイスの抽出物(お茶のようなもの)を作り、それをビールに少しずつ加え実際の完成品をイメージする、という方法がおすすめです。
もしも実験を行わずに、それが飲めないビールになってしまったら一大事です。
―使用量―
ビールにスパイスを加えた場合の最もよくある失敗は、スパイスを過剰に使用してしまうというところです。使用量が少なかったとしても、後で少しずつ足していくことが可能ですが、多すぎた場合は取り返しがつきません。
多くのスパイスは100Lあたりに対して10gも入れてしまうと多すぎます。また、投与量はもちろん、ハーブやスパイスの種類、形、鮮度、ビールの種類によっても使用量は異なります。使用量については自分で実験をするか、自分の使用したいスパイスのビールを、作ったことのある醸造家に教えもらうや、ネットや書籍から調べるなどの方法があります。
いくつかの使用例を挙げてみます:例えば、ホールのコリアンダーシードを自分で粉砕してすぐに使用するのと、パウダーになっているコリアンダーシードを使うより圧倒的にコリアンダーシードの方が香りや味が強いです。カルダモンはさやごとに売られていることがほとんどですが、さやの中に入っている種子に香りがあるのでさやからだし種子部分をつぶして使う方が香りはしっかりと出ます。
このようにスパイスにもそれぞれに特徴や使用方法が異なります。少しアクセントを加えるという軽い気持ちでスパイスを使用してみるという場合にも、最低限の下調べは必要となります。
アップルリーフやベーリーフなど
8 種類ほどのスパイスを使用したCERVECIA
(Brasserie St Feuillien)
コーヒーを使用したブロンドエール
使用方法によっては香りのみを抽出し色や苦みを抑えた使用もできる
(Kakegawa Farm Brewing)
―ハーブの投与形態と投与のタイミング―
通常スパイスは煮沸の最後の10分に粉砕したものを投入します。ただし、この方法でアロマの一部が煮沸により失われます。したがって、繊細な香りのハーブとスパイスは二次発酵、またはラガリングのタイミングに使用することがおすすめです。
煮沸中に使用することのもう1つの欠点は、最終的な調整が難しいということです。一度香りが強くつきすぎてしまったビールを薄くすることは不可能に近いです。ですが、味見をしながら使用量を少しずつ増やし調整することのできる、二次発酵やラガリングのタイミグの方が簡単に使用できます。
二次発酵またはラガリング中にハーブまたはスパイスを直接投入することはもちろんできますが、ハーブやスパイスの種類によっては少し熱を加えた方が香りの出やすいものもあります。その場合はハーブやスパイスをお湯で軽く温め、濃いお茶のようなものを作り、それを投入するという方法もあります。
それ以外にもハーブやスパイスをアルコールに浸し香りを抽出し、そのアルコールを投入するといった方法もあります。この濃い目のお茶やアルコールを使用するという方法はさらに味の確認が簡単で、例えばラガリング中のビールをサンプルコックから少し取り出し、抽出した液を直接加えて味をチェックし最終的なイメージを決めることができます。
(税法上それができない場合もありますので、気になる場合はお近くの税務署に確認を取って下さい。)
シナモン、クローブ、アニスなどのスパイスと
チェリージュースを加えて造られた温めて飲むGluehkriek
(Brouwerij Liefmans)
このように、ハーブやスパイスをビールに加える場合にも下調べや、実験、そして最終的に自分の味覚で少しずつ調整していかなければいけません。簡単に、そして少量でビールの味を変化させられる反面使用量など難しいところもたくさんあります。
ただ、日本にはその地域に昔からあるたくさんのハーブやスパイスがあります。それはまだ世界中のどの醸造家も使用したことのない、世界初の革新的なビールになるかもしれません。難しいこともあるとは思いますが無限の可能性があるハーブやスパイス、試しに少し自社のオリジナルビールに加えてみてはどうでしょうか。