ノンアルコールビール・
低アルコールビール醸造方法
―ノンアルコールビール・低アルコールビール―
ノンアルコールビールは、国際的に以前から人気がありました。少し前からは、アメリカでの人気も高まってきています。
このカテゴリーは、アルコール度数0.5%未満から2.5%程度のビールを対象にしています。これらの製造にはいくつかの方法が用いられています。
そのすべてがクラフトビール市場に当てはまるわけではありませんが、使用されるさまざまな工程を理解することは重要です。
―減圧蒸留―
大規模な醸造所では、高価な装置を用いてノンアルコール、低アルコールビールを製造するのが一般的です。
アルコール度数0.5%未満のビールを製造する方法のひとつに、減圧蒸留があります。これは、ビールを加熱し、蒸留プロセスでアルコールを除去する方法です。
アルコール度数0.5%未満のビールを作るには最適な方法ですが、好ましくないオフフレーバーを持つビールができてしまうことがあります。
加熱工程は、酸化したビールや自己分解したビールに典型的なオフフレーバーを発生させる可能性があります。
さらに、この装置は、クラフトビールメーカーにとってはかなり高価なものとなります。
―浸透膜ろ過―
2つ目の一般的な方法は、ビールを膜でろ過するもので、RO水を作る工程とよく似ています。
このプロセス専用の膜は、アルコール、色、一部の味と香りの化合物のみを膜に通します。
その結果、ビールからアルコールと水分が取り除かれ、その濃縮されたビールに水を戻します。
この方法は、小規模なクラフトビール醸造所にとっては、現実的なものとなり得るでしょう。
膜ろ過の欠点は、アルコールと一緒に風味が抜けてしまうことですが、最終的には味を調整して仕上げるので、よりクオリティーの高いノンアルコールビールになります。
―その他の方法―
ビールのレシピや発酵の工程を変えることは、低アルコールビールを製造するための良い方法ですが、0.5%未満を達成することはさらに難しくなります。
最初の方法は、マッシュプロファイルを変更することです。マッシュの温度を上げたり下げたりすることで、マルトースやグルコースといった発酵しにくい糖類を作ることができます。
マッシュの温度を 70°C 以上に保つと、デキストリンがより多く生成されます。
この方法では、低アルコールのビールを作ることができるうえ、麦の味と香りをより出すこともできます。
コールドマッシングは、マッシュの温度がデンプンのゲル化を下回るようにするもう一つの方法です。
水とブレンドしたり、炭酸を強めたりすることで、麦の風味を強くするが可能です。
―低アルコールビールイースト―
低アルコールビールの製造において、低アルコールイーストを使うことは新たなチャレンジです。
その多くは、マルトースやマルトトリオースを発酵させることができない非サッカロミセス株です。
これらの菌株を使用する場合、ビールは最小限のグルコースで構成されるよう計画する必要があります。
これらのイーストには、いくつかの種類が存在しますが、すべて非遺伝子組み換えです。
この種の発酵に使用できる低アルコール度数の菌株の例:
種類 特性[1]
WLP618
Saccharomycodes ludwigii |
マルトースとマルトトリオースの摂取が制限されている。
酢酸エチルの生産がある、より中性的な株 |
WLP603
Torulaspora delbrueckii |
マルトースとマルトトリオースを発酵させない。フルーティーで、ベルギー、セゾンスタイルやIPAに最適 |
WLP686
Zygosaccharomyces lentus |
マルトースの発酵が部分的にできない。
より中性的だが、培養が難しい |
これらのイーストは、発酵可能な糖の発酵を低く抑えながら、エステルの増加など風味に良い影響を与えることができます。
また、イーストや麦汁のレシピにもよりますが、アルコール度数1~1.5%程度生成します。
これらのイーストを使用して、現在市販されている製品に匹敵するような美味しい低アルコールビールを得るには、ある程度の研究開発が必要であることは確かです。
また、発酵させる糖の量が少ないため、ピッチングレートは低くなることが予想されます。
ラボで培養されたこれらのビールのピッチレートは、3~5百万細胞/mlです。
参考文献:
1.Capece, Angela & Romaniello, Rossana & Siesto, Gabriella & Romano, Patrizia. (2018). Conventional and Non-Conventional Yeasts in Beer Production. Fermentation. 4. 38. 10.3390/fermentation4020038.