モルト – ビールのボディ
パート1:モルト製造の基本
モルトはビール作りにとって最も重要な原料のひとつです。モルトの使用重量は水に次いで多く、ビアスタイルにもよりますが、1Lのビールを作るために約150gから250gのモルトを使用します。モルトはビールに色づけし、さまざまなアロマをあたえ、甘味と苦味、また時に酸味を加え、口当たりに影響し、ビールのボディを強めます。最も重要なのは、発酵中に酵母に糖分と栄養素を提供することです。
では、モルトとは何でしょうか?どのように作られ、なぜビールの醸造に使用されるのでしょうか? 本シリーズ記事「モルト – ビールのボディ」ではこの疑問に答えていきます。モルトの製造工程を説明し、さまざまなタイプのモルトにスポットライトを当てます。そしてブルワリーでのモルトの使用について考察し、最後に完成品のビールへの影響について考察します。
モルトとは何ですか?
簡単に言うと、モルトは醸造工程用に改良された穀物です。モルトは水に浸して発芽させます。発芽することで、穀物中のタンパク質とデンプンが変化します。これらのタンパク質とデンプンが醸造に適した段階になると、モルトを乾燥して発芽を止め、貯蔵に適した状態に安定させます。
各工程のステップを詳しく見てみましょう。
‐スティーピング(浸麦)‐
浸麦とは、穀粒の水分量を高めて発芽させるために、穀物を水に浸漬する工程です。自然界では、春の雨が土の中の穀粒を湿らせて成長を促すとき、この工程が自動的に始まります。
穀粒を水に混ぜる前に、小さな木片や石などの異物を分離して穀粒を洗浄します。その後、穀物を温水と混合し、発芽の開始に十分な酸素を供給するため通気します。穀粒内の水分が40%を超えた時点で、モルトは発芽室に移されます。
-ジャーミネーション(発芽)-
発芽とは、種子から新しい植物が成長するためのエネルギーと栄養素を供給するために、穀粒に蓄えられているグルカン、タンパク質、デンプン、その他の栄養素が改質される複雑な自然のプロセスです。これは穀粒の酵素によって行われます。酵素は特定の温度で活性化し、湿った穀物の中のグルカン、タンパク質、デンプンを分解します。
発芽室では、この工程は管理された環境下で行われます。モルトマスターは、湿度、温度、空気の流れ、時間を管理して、デンプンとタンパク質の改質レベルを正確に調整します。コンピューター制御を備えた現代の製麦工場でも、醸造用モルトの完璧な品質を保証するためには、モルトマスターの経験が最も重要になります。そのため、IREKSやThe Swaenの製麦会社では、モルトマスターによって硬度、穀粒の見た目の変化、アロマ、味の官能評価が毎日行われます。このようにしてモルトマスターは、ブルワリーで麦汁を製造するブルワーが必要とする麦芽ができるように保証します。
穀物の種類と目標とする最終的な麦芽プロファイルに応じて、発芽期間は麦芽を乾燥させ停止するまで2~6日かかります。
-キルニング(焙燥)-
モルトの乾燥は、「キルニング」と呼ばれる2段階の工程を経ます。第1段階では、穀粒内のデンプン、タンパク質、酵素の熱損傷を避けるために、水分が約12%まで非常にゆっくりと減らされます。第2段階では、モルトマスターがモルトの最終的な特徴を決定します。高温通風乾燥の温度、量、流量を変更することで、異なるモルトの色とフレーバープロファイルが得られます。一般的なルールとして、キルニング工程終了時の温度が高いほど、モルトの色が濃くなり、モルトの風味がより強くなります。
乾燥後、モルトは冷却され、調整のためにサイロに保管され、ブルワリーへの出荷前に梱包されます。
穀物とモルトの品種
モルトの製造には、さまざまな穀物が使用できます。最も用いられる品種は大麦です。いわゆる「ビール大麦」とは、ビール醸造に適したモルトを製造するために特別に栽培された大麦の品種です。通常これらの麦芽は、デンプンの含有量が高く、タンパク質の含有量が低いため、麦汁を作るのに理想的です。大麦と小麦の他に、ライ麦やスペルト小麦も一般的に使用されます。これらの穀物から作られたモルトは、ビールのアロマ、味、口当たり、外観に特別なニュアンスを加えることができます。
ビール醸造用大麦
デンプン含有量が高く、タンパク質含有量が低い大麦品種で、ビール醸造に最適です。
醸造用大麦には六条大麦と二条大麦がありますが、醸造用の二条大麦はタンパク質とデンプンの比率が好ましく大粒なため、より人気があります。また、大きさも比較的均一であるため、ブルワリーでの粉砕に適しています。
小麦
小麦はタンパク質含有量が高く、ほとんどの場合、配合麦芽の一部にのみ使用されます。ドイツスタイルの小麦ビールでは、50%まで使用できます。その他のビールでは、小麦モルト、プレーンビスケットまたは白パンのような味わいのプロファイルをあたえるため、またわずかに甘い印象、柔らかい口当たりとコク、または非濾過ビールに濁った外観を追加する目的で、主に5〜30%の間で使用されます。小麦モルトに含まれるタンパク質の含有量が高いことも、泡の量と保持力に良い影響をもたらします。
ライ麦
ライ麦もまたタンパク質の含有量が高くなっています。小麦と同様に、ビールのボディを強め、ジューシーまたはクリーミーな口当たりをあたえる目的で加えられます。また、ビールにわずかにスパイシーな特徴をあたえ、より複雑でバランスのとれたビールができます。
スペルト
スペルトは小麦の祖先種です。そのためスペルトもまたタンパク質の含有量が高いです。使用量を2%程度に抑えると、ビールのモルトの特徴にコクと複雑さが加わり、全体のバランスが良くなります。ドイツの伝統的なブルワリーの中には、配合麦芽に30~50%のスペルト小麦を使用してスペルトビールを製造しているところもあります。
オーツ麦
オーツ麦は、麦芽オーツ、フレークオーツ、またはトリファイドオーツとして使用されます。これらを使用すると、不発酵デンプンと高レベルのタンパク質を麦汁に加えることができ、ビールにコクと柔らかく滑らかな口当たりをあたえます。オートミールスタウトなどの一部の伝統的なビアスタイルでは、レシピにオーツ麦が必要です。
上記の穀物はすべて、さまざまな方法でモルト化と精製を行い、ベースモルト、メラノイジンモルト、クリスタルモルト、ローストモルト、スモークモルト、サワーモルト、またチットモルトを製造できます。
これらのモルト品種については、シリーズ「モルト – ビールのボディ」のパート2でさらに詳しく説明します。
BETでは、ヨーロッパの信頼できるパートナーから、日本のブルワリーや蒸留所にプレミアムモルトを供給しています。鮮度はビールにとって最も重要な品質要件のひとつです。醸造で使用される原料の鮮度から気を配る必要があります。モルトが新鮮であればあるほど、ビールは美味しくなります。
弊社のモルトはすべてヨーロッパで生産されています。醸造用の大麦、小麦、ライ麦、スペルト小麦は、EUの契約農家によって100%現地で栽培されます。弊社ではすべてのモルトをドイツとオランダの製麦会社から直接輸入しています。そして、日本国内の食品および食品原料用の認可を得た、15℃以下に温度管理された倉庫で保管しています。私たちは、ビール醸造と蒸留業界のビジネスパートナーに、最高品質のモルトを提供するために努めています。
BETが扱うモルトブランドの詳細は、以下をご覧ください。
IREKS - 1856年創業のクラフトモルト
IREKS(イレクス)は、ドイツで最も歴史ある家族経営の麦芽製造所です。会社名は、創業者の (I) イオハン・ (R) リュックデシェル・ (e) エ・ (S) ゾーネと、IREKSのスペシャリティモルトを製造しているフランケン地方の (K) クルムバッハ市にちなんで命名されました。もともとブルーマスターでありベーカリーマスターでもあったヨハン・リュックデシェルは、自分のビールとパンのためにモルトを製造しました。彼のモルトが有名になり、地域のブルーマスターやベーカリーマスターが彼からモルトを購入するようになるにつれて、彼はモルト製造に特化するようになりました。IREKSは今日までずっと、モルト製造がビール作りにとって不可欠な要素であると考えています。IREKSのモルトマスターは全員、熟練のブルーマスターでもあります。彼らは完成品のビールを詳しく理解しているため、すべてのモルトがビアスタイルに合わせて最適にモルト化できるようにし、世界各国の醸造所がIREKSのモルトを使用して最高のビールを作れるよう保証します。
IREKSの全モルトはこちらでご確認ください 。
The Swaen - モルトを工芸品に
The Swaen(スワン)は、ベルギー国境に近いオランダのフランドル地方にある家族経営の製麦会社です。1906年からはプレミアムモルトを製造しており、ヨーロッパをはじめ、その他の地域のブルワリーにも提供してきました。
現在The Swaenは、改装して一新された最先端の工場を備え、ベースモルトとスペシャリティモルトの持続可能な生産に注力しています。ビール醸造と蒸留用の多種多様なモルトを、世界各国のお客様に提供しています。
The Swaenの全モルトはこちらでご確認ください。
弊社のモルトを使用したビール醸造や蒸留にご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
著者:
セバスティアン・ホヘンタナ