大人気 の「ヘイジーIPA」にピッタリの酵母を見つけよう!
”濁り”系ビールとして人気が高まっている「ヘイジーIPA(Hazy IPA)」。多くの醸造家が「ヘイジーIPA」にぴったりのホップを見つけるのに力を入れていますが、酵母菌株もビールの美味しさを決める大切な要素です。今回は、White Labsの専門家が教える「ヘイジーIPA」にぴったりな酵母菌株を見つける方法について紹介します。また、「ヘイジーIPA」をベースにした様々なスタイルのビール作りに役立つようなヒントもご紹介します。
大ブームの「Hazy IPA (ヘイジーIPA)」とは?
2018年に開催された『グレートアメリカンビアフェスティバル(Great American Beer Festival)』では、ジューシー/ヘイジーIPA (Juicy/Hazy IPA) カテゴリーで出品されたビールが391個あり、アメリカンインディア・ペール・エール (America-style India Pale Ale)カテゴリーで出品されたビール数311を超えるほどの人気を見せた「ヘイジーIPA」。
「ヘイジーIPA」と言えば、ホッピング速度やテクニックがフォーカスされて語られることが多いものの、選ぶ酵母菌株も重要です。
酵母は、500以上のビールの味わいや香りを決める要素で、適切な酵母を使うことはビール全体の味を決めるだけでなく、他のビールとの違いを出すという意味でも重要です。
White Labsでラボマネジャーを務めるKara Taylor氏は、酵母菌株について次のように語っています。
「他のメーカーと違うヘイジーIPAを作るなら酵母菌株がカギです。酵母によって、それぞれの口当たり、見た目、味わい、香りなどが決まります。」
ピッタリの「酵母菌株」を見つけるために
酵母菌株が重要だと分かりつつも、酵母の種類が多いこともあり、自分が探している酵母を見つけるのはとても大変な作業です。そんな方のために、Taylor氏が教えるそれぞれの酵母の特徴を解説したいと思います。
ヘイジーIPAスタイルを決める酵母
ヘイジーIPA作りの酵母菌株といえば「WLP066 London Fog Ale Yeast」。この酵母では、大らかな口当たりに柑橘系フルーツの特徴を出すことができます。統一感があり使いやすい酵母で、柑橘系のビアスタイルを作るときによく使われます。
また、ニューイングランドIPAでもよく使われる酵母で、「WLP008 East Coast Ale Yeast」に似たミディアムボディの香りがあります。甘みが後味として残り、モルトとホップの味と香りを引き立てながらも、口当たりはとてもなめらかです。
WLP066 詳細(スペック)
発酵度:75.00〜82.00
凝集性:低〜中程度
アルコール度数:中〜高(8〜12%)
最適発酵温度:18.0〜22.0ºC(64.0〜72.0ºF)
レシピアイデア
タイトル:Hazy Waze:Wyatts Revenge(ワイアットのリベンジ)
使用された酵母:WLP066 London Fog Ale Yeast
レシピ考案者:White Labs Brewing Co.
ブリュワーであるJason Wyatt氏のお気に入りビールとして作られました。オーツ麦フレークと酵母「WLP066 London Fog Ale Yeast」 の組み合わせが、ビールに濁りとボディを与えます。このジューシーなビールでは、白ワインのような香りとパッションフルーツの味わいが楽しめます。ぜひ実際に試してみてください。様々な種類のホップを加えて楽しめる、ベースとして使えるビールです。
Oat IPA(オーツIPA)
酵母:WLP066 London Ale Yeast
初期比重:1.071
最終比重:1.015
アルコール度数:7.5%
苦味 (IBU):47
Grain(穀物)
シングルインフュージョンマッシュ 65.5ºC (150°F)
83.1% IREKSペールエール
15.1% オーツ麦フレーク
1.8% IREKSクリスタルメープル
Hops (ホップ)
Magnum (7 IBU):60分追加
Experimental 12/9 (16.4 IBU):25分追加
Experimental 12/9 (11.7 IBU):15分追加
Experimental 12/9 (8.5 IBU):10分追加
Hallertau Blanc (2.7 IBU):5分追加
Hallertau Blanc (0.7 IBU):1分追加
Experimental 12/9 (15g/L):5日間のドライホップ追加
クラシックハウスで作るヘイジーIPA
酵母「WLP008 East Coast Ale Yeast」 は、ペールエールからブロンドエール、スタウトなどのクラフトビールで何十年も使われてきた酵母です。幅広いビアスタイルで使われていながらも、ドライでフルーティーなヘイジービール作りにもっとも最適な酵母でもあります。濁りの見た目のビールに、キリッとした喉ごしとIPAの口当たりのビールを作るのに最適です。
また、これらの特徴を生かして、East Coast IPAを作るときにも使われています。他の濁り系酵母よりもクリーンで、爽やかな特徴があります。「WLP001 California Ale Yeast」に似た特徴を持ちながらも、エステル香が強めです。また後味に甘さが広がり、甘いフルーツの味わいを感じることができます。
『私がニューイングランドIPAを作るときに使う、お気に入りのWhite Labs酵母は「WLP 008 East Coast Ale」です。この酵母はとても自然で、フルーティーなエステル香が通常のWLP 001よりも多めです。とても使い勝手がよく、発酵性があり、イギリスの酵母と比べて凝集度が低めです。この酵母のおかげで、常に一定の仕上がりを出すことができ、私が理想とするニューイングランドIPAをいつも実現できます。』(The Beer Nerd Collective)
WLP008 詳細(スペック)
発酵度:70.00〜75.00
凝集性:低〜中程度
アルコール度数:中程度(5〜10%)
最適発酵温度:20.0〜22.0ºC(68.00〜73.00ºF)
レシピアイデア
タイトル:Haze Machine
使用された酵母:WLP008 East Coast Ale Yeast
レシピ考案者:White Labs Brewing Co.
シングルホップで作るビールは、ホップ由来の独自の特徴を最大限に生かすことができます。世界中で気軽にドイツのホップに手が届くようになり、アメリカでのビール文化を大きく変えました。「Grühngeist」という名称がつけられたこのホップは、米国カリスタで栽培が行われています。クリーンなモルトで、パッションフルーツやアプリコット、桃、レーズンなどの香りを感じることができます。ソフトな苦味を舌に感じることで、全体的になめらかな印象を与えます。そして、酵母「WLP008 East Coast Ale Yeast」を使うことで、このフルーティーな味わいを前面に出し、全体の味のバランスを取るモルトの特徴を加えています。
ぜひこのレシピを試してみてください。違うホップを使って試すことも可能ですが、苦味を40 IBUにキープすることをお勧めします。
Haze Machine
酵母:WLP008 East Coast Ale Yeast
初期比重:1.061
最終比重:1.012
アルコール度数:6.4%
苦味 (IBU):40 (ワールプールホッピングとドライホッピングからさらに約5 IBU)
Grain(穀物)
シングルインフュージョンマッシュ 64ºC (147°F)
45.8% IREKSペールエール
45.8% IREKSピルスナー
3.6% IREKSウィーンモルト
2.4% IREKSクリスタルメープル
2.4% IREKSミュンヘンモルト
Hops(ホップ)
Callista (10 IBU):60分追加
Callista (15 IBU):10分追加
Callista (10 IBU):5分追加
Callista (5g/L):ワールプール追加
Callista (10g/LIBU):5日間ドライホップ追加
酵母をブレンドして出すビールの深み
複数の酵母を混ぜる方法は以前からも行われていましたが、ホップ好きのアメリカンスタイルなどではあまり見られない方法です。酵母を混ぜることで、ビールに深みを出すことができ、一つの酵母だけでは実現できないような味わいを加えることができます。酵母「WLP067 Coastal Haze Ale Yeast Blend」は、ブレンドされた酵母で、特にヘイジービールを作る人向けに作られました。他のヘイジー酵母と比べて、酸性と乾燥度が少し高いという特徴があります。ドライながらもジューシーなビールで、爽やかなトロピカルフルーツのような仕上がりを楽しめます。
WLP067 詳細(スペック)
発酵度:70.00〜75.00
凝集性:低〜中程度
アルコール度数:中〜高 (8〜12%)
最適発酵温度:20.0〜24.0ºC (68.00〜72.00ºF)
レシピアイデア
酵母「WLP067 Coastal Haze Ale Yeast Blend」を使ったレシピに関しては、こちらの大人気ヘイジースタイルIPAの作り方記事をぜひご覧ください。
もっとドライでフルーティーにいこう!
このスタイルでは発酵性の高い酵母は使われない傾向にありますが、「WLP644 Saccharomyces “bruxellensis” Trois 」を使うことで、ドライで濁った見た目に、ホップの香りとユニークなエステル香を感じるビールを作ることができます。他のヘイジー系とはまた違ったバリエーションを作りたいときに最適です。この酵母を使うことで、酸性とまろやかなフルーティーな味わい、そして自然な口当たりを出すことができ、ゴクゴクと飲みやすいビールに仕上げることができます。
また、自然酵母発酵として昔から使われてきたベルギー酵母でもあり、マンゴーやパイナップルのような味わいのあるタルトビールにもなります。この自然酵母は、そのトロピカルな香りと味わいの特徴から、アメリカンIPAやアメリカンエール、ジューシーIPAなどのスタイルを作るときに重宝されています。このサッカロミケス菌株は通常の菌株と同じように取り扱いが可能で、CIP(定置洗浄)で簡単に洗浄ができます。
WLP644 詳細(スペック)
発酵度:85.00〜85.00
凝集性:低度
アルコール度数:中〜高 (8〜12%)
最適発酵温度:21.0〜29.0ºC (70.00〜85.00ºF)
レシピアイデア
これまで紹介したレシピアイデアからレシピを選んで、代わりに「WLP644」の酵母を使ってみてください。注意が必要なのが、この酵母は他の酵母と比べて発酵時間が少し長めにかかるところです。十分な時間を醸造に確保することで、ブレタノマイセスの働きでビールの発酵を促進させ、ドライでタルトな仕上がりを出すことができます。
ジューシー/ヘイジーIPAについてもっと知りたい人は、『ニューイングランドIPAとその仲間「ヘイジースタイルビール」を徹底解説!』をぜひご覧ください。Brewer Associationの公式ガイドラインから、水の使い方、モルトの選び方、ホップの種類など、ヘイジースタイルビールに関すること全て紹介しています。
White Labs (ホワイトラボ) について
White Labs社は、米サンディエゴを本拠点とするグローバル会社で、リキッドイーストから発酵関連の商品からサービスの提供、分析、ビール専門家や職人に向けた教育を行なっています。ビール発酵の分野にて常に最先端を走り、科学の力で純度と鮮度の高い商品づくりを行なっています。史上初の「リキッドイースト」の開発から、販売・パッケージ化に革命をもたらすなど、常にイノベーションをもたらしています。White Labsでは、ヘイジー系ビールだけでなくクラシック系など、100種類以上のビアスタイルに対応した酵母菌株を取り揃えています。
株式会社BETでは、2007年以来White Labsの公式販売代理店として日本で商品提供を行なっています。毎月、White Labsの新鮮な酵母を輸入しており、皆さまのビールづくりに最適な高品質リキッドイーストを提供しています。