最新『2019年版ビアスタイル・ガイドライン』が米国ブリュワリー協会から公開されました!
米国ブリュワリー協会(Brewers Association)では、1979年以来これまで、ビール醸造者や団体向けにビアスタイル・ガイドラインを発行してきました。先週には、2019年版が公開されたばかりです。そこで今回は、そのガイドラインで紹介されている最新ガイドラインの大きな変化や、新しいビアスタイルについて背景とともに紹介します。
2019年版ビアスタイル・ガイドラインには、1,000回の編集と書式変更、情報のアップデートが加えられて作られており、様々なビアスタイルのガイドライン情報の追加、削除、組み合わせを行いながら簡素にまとめられています。この最新ビアスタイル・ガイドラインでは、2019年のグレート・アメリカン・ビア・フェスティバルの基本情報や、2020年のワールド・ビア・カップのガイドラインが紹介されています。
ブリュワリー協会の大会代表者Chris Swersey氏は、次のように述べています。
「ビール醸造者の方たちがビアスタイルを革新・進化させる中、彼らのビールへの情熱を反映させた米国や世界のビア市場におけるビアスタイル・ガイドラインも共に変わっていかなければなりません。ブリュワリー協会が配信するビアスタイル・ガイドラインは、大掛かりな編集を要する大プロジェクトで、業界の確固たる議論や質の高いビール製品の提供に繋がっています。私たちはこの重要な情報がまとめられたガイドラインを、世界中のビール醸造者から、消費者、ビールファンに届けられることを誇りに思います。」
2019年版の主要ガイドライン変更
ー新しく追加された4つのビアスタイル・ガイドライン
・ジューシーまたはヘイジーストロングペールエール(Juicy or Hazy Strong Pale Ale)
・コンテンポラリー・ベルジャンスタイル・グーズ・ランビック(Contemporary Belgian-Style Gueuze Lambic)
・フランコニアンスタイル・ロートビア(Franconian-Style Rotbier)
・アメリカンスタイル・インディアンペール・ラガー(American-Style India Pale Lager)
ー今回再定義されたビアスタイル
・ペールまたはダーク・アメリカンベルゴスタイル・エール(Pale and Dark American-Belgo-Style Ale)
・ケラービアーまたはツヴィッケルビア・エールまたはラガー(Kellerbier or Zwickelbier Ale and Lager)
・ブレスラウスタイル・ペール&ダーク・シェープス(Breslau-Style Pale and Dark Schoeps)
・アメリカンスタイル・ライト&ダーク・ウィートエール(American-Style Light and Dark Wheat Beer)
・木片および木樽熟成のペールからアンバー、ダーク、ストロングビール(Wood-and Barrel-Aged Pale to Amber, Dark and Strong)
ーガイドラインから削除されたビアスタイル
・アメリカンスタイル・アイス・ラガー(American-Style Ice Lager)
最新の4つのビアスタイルに関する詳細
ジューシーまたはヘイジーストロングペールエール(Juicy or Hazy Strong Pale Ale)
色合い:藁色から濃い黄金色
透明性:濁りが低いものから高いものまで様々見られる。この濁りには、デンプン、酵母、ホップ、タンパク質、そしてその他の成分が影響している。
感じられるモルトの香りと味わい:低度から中〜低度の香りと味わいが見られる
感じられるホップの香りと味わい:(原産地のホップの特徴的な香りと味わいに加えて)中〜高度から高度のホップの香りと味わいが見られる
感じられる苦味:低度から中度。苦味はやわらかい印象で、全体の味わいとバランスが取れている。感じられる苦味は、測定されるIBUレベルによって異なる場合がある。
発酵における特徴:中〜低度または中〜高度のフルーツの香りが見られ、甘みとして感じられホップ全体の味わいにうまく溶け合っている。ジアセチルは見られない。
味わい(ボディー感):中〜低度または中〜高度。シルキーで口いっぱいに広がる口当たりが、全体の味わいに影響している。
備考:濁りを作るために オート麦や小麦、その他の添加物が加えられている場合がある。「ジューシー」という言葉は、遅らせて大量にホップを加えた時に見られる味わいや香りを意味し、決してジュースのような味わいであるわけではない。またこのジューシーの特徴により、柑橘系、パイナップル、スパイス、フローラルなどのような味わいがホップから形成される場合もある。
初期比重 (プラート度):1.050〜1.065(12.4〜15.9プラート度)
最終比重 (プラート度):1.008〜1.016(2.1〜4.1プラート度)
アルコール度数 (容量):4.4%〜5.6%(5.6%〜7.0%)
苦味 (IBU):40〜50(感じられる苦味とは大きく異なる場合がある)
色度数 (EBC):4〜9 SRM (8〜18 EBC)
コンテンポラリー・ベルジャンスタイル・グーズ・ランビック(Contemporary Belgian-Style Gueuze Lambic)
色合い:黄金から暗い色
透明性:グーススタイルは瓶のまま保存されるので、濁りは許容範囲
感じられるモルトの香りと味わい:モルトの甘みは見られない。モルトの品種によっては、独特な味わいが見られる。
感じられるホップの香りと味わい:チーズ風味、フローラル、ラベンダーの香りが多少見られる
感じられる苦味:とても低度の苦味
発酵における特徴:熟成期間が違うものを混ぜて、二次発酵させるランビックビールは、ドライでまろやかな甘みが見られる。フルーツの強い香りと、酸っぱさ、酸味などの特徴が見られる。ジアセチルは見られない。ブレタノミセス酵母由来のホースィー(馬臭)、ゴーティー(山羊臭)、レザリー(革臭)などの香りもある程度見られる。熟成したランビックと若いランビックを混ぜて、この特別なスタイルのランビックビールが作られる。バニラ風味や木の香りは見られない。炭酸はほぼ見られないか、中程度に見られる。
備考:ベルギーのブリュッセル地域が原産で、「グーズ・ランビック」と呼ばれる。ブリュッセル地域外で作られたこのビアスタイルに関しては、「ベルジャンスタイル・グーズ・ランビック」と呼ばれる。このベルジャンスタイルは、本物に近い形で作られている。伝統的なグーズ・ランビックはドライな特徴があるものの、コンテンポラリー・ グーズ・ランビックには砂糖やその他の甘味料による甘みが見られる。グーズは従来、麦芽なしまたはありのモルトと、古くて熟成したホップが使われる。一方でコンテンポラリー・ グーズでは、仕上がりの色合いや味わい、香りに影響するような特別モルトを使って作られる。このガイドラインをベースにして作って大会に出品した際には、正確な評価を行うために、醸造者側は補足情報などを提供する必要がある場合がある。補足情報として、どのようなランビックビールがベースになっているか、また仕上がりに影響するもので、例えばどのような特別なモルト、甘味料、材料が使われて処理されたかを公開する場合がある。
初期比重 (プラート度):1.044〜1.056 (11〜13.8プラート度)
最終比重 (プラート度):1.000〜1.010 (0〜2.6プラート度)
アルコール度数 (容量):4.0%〜7.0% (5.0%〜8.9%)
苦味 (IBU):11〜23
色度数 (EBC):6〜40 (12〜80 EBC)
フランコニアンスタイル・ロートビア(Franconian-Style Rotbier)
色合い:琥珀色から濃い赤色
透明性:フィルターなしで作られた場合、透明または多少の濁りが見られる。冷却時には濁りは見られない。
感じられるモルトの香りと味わい:軽くトーストされたモルトの香りと、モルトの甘みが特徴。軽いキャラメルとビスケットの味わいが見られる。
感じられるホップの香りと味わい:中〜低度で、洗練されたホップの味わいが見られる。
感じられる苦味:低度から中〜低度で、すっきりした後味
発酵における特徴:硫化ジメチルやジアセチル、フルーティーな香り、フェノール類は見られない。
味わい(ボディー感):中程度
初期比重 (プラート度):1.046〜1.056 (11.4〜13.8プラート度)
最終比重 (プラート度):1.008〜1.010 (2.1〜2.6プラート度)
アルコール度数 (容量):3.8%〜4.4% (4.8%〜5.6%)
苦味 (IBU):20〜28
色度数 (EBC):13〜23 (26〜46 EBC)
アメリカンスタイル・インディアンペール・ラガー(American-Style India Pale Lager)
色合い:藁色から黄金色
透明性:ホップの濁りが多少見られる場合がある。冷却時の濁りは見られない。
感じられるモルトの香りと味わい:中〜低度または中程度で、淡い麦芽に特徴のパンまたはビスケットの風味が見られる
感じられるホップの香りと味わい:中〜高度で、よくあるホップの味わい
感じられる苦味:中〜高度だが、きつめではない
発酵における特徴:フルーティーな香り、硫化ジメチル、ジアセチルは見られない
味わい(ボディー感):中〜低度または中程度
備考:このビアスタイルでは、ホップの新鮮な風味を感じることができる
初期比重 (プラート度):1.050〜1.065 (12.4〜15.9プラート度)
最終比重 (プラート度):1.008〜1.016 (2.1〜4.1プラート度)
アルコール度数 (容量):4.4%〜5.6% (5.6%〜7.0%)
苦味 (IBU):30〜70
色度数 (EBC):3〜6 (6〜12 EBC)
ブリュワリー協会のビアスタイル・ガイドラインについて
このビアスタイル・ガイドラインは、ブリュワリー協会によって編集され、商業醸造業界、ビール分析、ビール醸造コンサルタント、ビール博学者向けに作られた情報誌です。ブリュワリー協会のビアスタイル・ガイドラインでは、できるだけ多くの歴史的背景、信憑性、 そして現在のビール市場での重要点を踏まえて作られています。ほとんどの場合、歴史的背景は明確でなかったり、新しいビアスタイルも一時的なトレンドで終わってしまうこともあり、すぐに忘れられがちです。そのため、このビアスタイル・ガイドラインでは既存リストへの追加や編集が細かく行われており、入念な調査や協議、市場実勢が長い期間に渡り行われています。また、商業的に見られるビアスタイルのトレンドは決して歴史的背景に沿ったものではなく、その時代のモダンなトレンドスタイルだけであったりします。そのため、特定の歴史的なビアスタイルを盛り込むことで、ビールの伝統を記録して伝統を守ろうとする目的もあります。時が経っても、ビール市場や消費者に長く親しまれているビアスタイルのものであれば、ブリュワリー協会のビアスタイル・ガイドラインに含まれる可能性が高まります。
市場での受け入れられ度合いも、ガイドラインのリスト入りできるかの分かれ道となります。長く受け継がれるビアスタイルや商業用ビアスタイルだからといって、全てがガイドラインに載せられるわけではありません。またすべての商業ビールが、ビールの伝統を反映したものとして紹介できるわけでもありません。(例:ビール醸造所がラベル表示にて特定のビアスタイルを主張したとしても、そのビアスタイルのビールであると必ず受け入れられるわけではありません。)
このガイドラインに記載されたビアスタイルは、市場にあるビアスタイルを反映したビールに関するデータと相互参照して定義されています。ここで使われているデータは、Anton Piendl教授によって行われた調査を元にしており、1982年〜1994年のビール醸造業界雑誌「Biere Aus Aller Welt」(ドイツ)にて出版されたものです。